バイト代30万

大学時代、友人に誘われて競馬をたしなむ時期があった。
友人は、そこそこ当たりを出していて、けっこうのめり込んでいた。
僕にとっての競馬は、競馬新聞の見方がよくわからなかったので、若干勘に頼ったり、友人のおススメにのっかったりするぐらいで、正直、勝てていたという印象はほとんどない。
ある時である。その友人が、とにかく固いレースを入念にチェックし、たぶんG1レースだったと思うけど、1番人気単勝2倍ぐらいのレースの新聞情報をじっくり吟味していた。
そして、何かを決心した友人はおもむろに懐から封筒を取り出し、中からちょっと多めの現金が・・・。
「30万あるんだ」
不敵な笑みを浮かべて、彼は券売機の方へ・・・。
まさかと思い、意気揚々と戻ってきた友人が見せた1番人気単勝30万1点買いの馬券。
「マジで!?」
と、僕が言うと、当たり前のように、
「大丈夫、このレースとこの馬は間違いないから・・・」
と、自信ありげにこのレースを獲った後のことなどをいろいろと話していた。
そして、数分後。
その30万は、JRAに寄付する形となったわけである。
聞けばバイトでコツコツ貯めたお金であったという。
うむ、人の価値観なんて十人十色とはよくいうが、そんなギャンブル魂を持つ友人には逆に感心してしまった。
さすがにそのハズレ馬券は破り捨てることができなかったらしく、しばらく笑いのネタにと財布の中に入れていた。